2010年07月04日

「どっちもドア」はガラパゴス化の象徴?―産経新聞「一筆多論」の記事に思うこと。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。
 
先週の月曜日の産経新聞「一筆多論」というコーナーに、『もう一つのガラパゴス化』という記事が掲載されていました。論説副委員長・五十嵐徹さんの記事です。
 
WEBでの記事はこちら⇒http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100628/stt1006280740002-n1.htm
 
この記事の主旨は、「独自進化して世界から逆にかけ離れてしまう現象」をガラパゴス化というが、政治の独自進化ならぬ劣化という「もう一つのガラパゴス化」は回避せねばならない…ということにあります。その点については、私も同感ですし、異論はありませんが、気になったのが冒頭で「ガラパゴス化」の例として「左右どちらからでもドアを開閉できる冷蔵庫」のことが引き合いに出されていたことです。
 
ある程度家電に詳しい人ならすぐに思い当たるはずかと思いますが、シャープが20年以上前に特許をとって今でも受け継がれている「どっちもドア」のことを示しています。 

「ドアなしというなら驚きだけれど、どちらからでも開けられることに、どれほどの意味があるのかね」。隣席で懸命に笑いをこらえていた知人が、後日明かした理由である。

これは、1990年代初めに開催された「日本の技術力の秘密」と題するシンポジウムでの話のようですが、五十嵐氏は、この後の文章でこう続けます。


世はグローバル化の時代とはいえ、国柄で価値観が異なるのは今も昔も同じだ。われわれには重宝でも、海を渡れば見向きもされない技術だってある。


こうした技術を「ガラパゴス化」といい、「井の中の蛙」な日本人ということについて、何だか違うのではないかなあと思うのです。それがとてもいいものなら、海外にも伝わるはず…というのも違うと思うし、日本人が「こうだったらいいのにな」と望んでいることに応えるものづくりをすることは素晴らしいと思うのですが、私は古い考えなのでしょうか?
 
ちなみに、この「どっちもドア」は、転勤(=引っ越し)が多い家庭で特に重宝されていると聞いています。決して広いとはいえない日本の住宅事情の中で、狭いキッチンのどこに冷蔵庫を置く場合でもスムーズにドアが開けられるという利便性。そのほかにも、家族に右利きの人がいても左利きの人がいても、どちらにも使いやすい…という声もあるとのこと。日本人ならではの細やかな気配りがあってこその、ものづくりだと思います。
 
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家電については、企画・開発者や、技術者の方々にお話を聞く機会がとても多く、「技術者の声を届けてくれる人がなかなかいないので、それを記事にしてくれることがどれだけ励みになっているかわかりません」と言われていることもあり、今回のような記事にはどうも過剰に反応してしまいます。
 
独りよがりの技術によるものづくりはほめられものではありませんし、多機能になりがちな日本の家電について疑問に思っていることもたくさんあります。
 
でも、流行りの「ガラパゴス化」というひと言で何でもくくってしまうことには違和感をおぼえずにいられないのです。生活者としてのぶれない視点をもとに、これからも企業の方々と消費者との間をつなぐ役割でありたいとあらためて思います。
 
 
 

posted by 神原サリー at 14:25| Comment(4) | TrackBack(0) | サリーのひとりごと

2010年07月03日

ビックカメラの冷蔵庫売り場にて。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。
 
冷蔵庫が一番、売れるのはいつだと思いますか? それは、ズバリ夏! 
 
アイスクリームなど冷凍の食材をフル活用するから? 氷をたくさん使うから?
 
いいえ、冷蔵庫が一番壊れやすいのが夏だから。たぶん冷蔵庫のドアの開け閉めの回数も増え、その分、庫内の温度も上がって冷やすのに負荷がかかるからなのでしょうね。そういえば、過去2回、わが家の冷蔵庫の調子がおかしくなって買い替えたのも、確か夏のことでした。
 
そんな冷蔵庫ですが、今年の12月末までエコポイント制度が延長されたこともあって、8〜10年使ってきた家庭では買い替えを考えている人も多いようです。ただ、冷蔵庫売り場に行ってみると冷蔵庫というのはどれも四角い箱で、同じように見えてしまうんですよね。
 
事前に下調べをして、各メーカーの特長を押さえておいて、候補をしぼってから実物を見て選ぶのが賢い方法だと思うのですが、突然壊れてしまった場合は、「早く買わなくちゃ!」という気持ちばかりがせいてしまって、なかなかじっくり検討できないものです。
 
で、そんな人でも選びやすいし、特長がわかりやすいだろうなあと感心したのが、ビックカメラの冷蔵庫売り場で見かけたPOPです。

 
TOSHIBA 「まんなか野菜室」
 
重たいものも出し入れラクラク!
 
しかも野菜のみずみずしさキープ! 


上の写真は東芝のものですが、他のメーカーのものにも、特長が一目でわかるようなポイントが書かれています。ビックカメラが独自で作ったPOPのため統一感があるし、その冷蔵庫ならではのいいところ、使いやすい点が簡潔に示されているので、このPOPを読んでみるだけでも、いまどきの冷蔵庫事情がわかります。

 

「どれも同じに見える」「○○のメーカーのを探しているのに、どこにあるのかわからない」「たくさん説明されすぎていてわかりづらい」…そんな悩みをクリアできるのは、やはり売り場(お店)ならではのPOPじゃないと難しいのかなと。
 
各メーカーさんがどれぞれ独自のPOPづくりをしているし、それも大事なのだけれど、お店のほうで全体を俯瞰してみて、噛み砕いて説明してくれるPOPというのも大切だなと思うのです。

 

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ここからは余談になりますが、東芝のまんなか野菜室の冷蔵庫、上のPOPでちょっとだけ私の観点とは違うところがあります。
 
上のPOPには「まんなかに野菜室があるから、重たい野菜も出し入れラクラク!」と書いてあるけれど、まんなかにあることの便利さは「重たい野菜でも出し入れが楽」なのではなくて、「料理中に何度もあけることの多い野菜室。欲しい野菜がかがまずにすぐとれる!」ということなんですよね。
 
このあたり、料理をしたことのない人にはわかりにくいかもしれないし、まだまだ男性目線なのかなあ、なんてちょっと思いました。
 


 

posted by 神原サリー at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | このPOPに惚れました♪