2010年12月01日

「お掃除するのは、ルンバの仕事。〇〇するのは、あなたの仕事。」

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先週末くらいから、自動掃除機「ルンバ」の新しいCMが流れるようになりました。「天才!」とわが子を溺愛する両親の声と、思わず頬にさわりたくなるような可愛らしい赤ちゃん。その足元で、ルンバが黙々と掃除をしている様子が映し出されます。

そして…「お掃除するのは、ルンバの仕事。愛されるのは、あなたの仕事。」の文字。

これは「赤ちゃん篇」ですが、もう一つ「夫婦篇」もあって、かなりシビアな状況の様子。どうやら、夫の携帯電話を妻が見てしまったようで、「妹だよ妹」という夫の弁解に、「妹ならダーリンなんて呼ばないでしょ」と妻の冷たい言葉。そんな取り込み中の夫婦の足元では、先ほどの赤ちゃん篇同様にルンバが淡々と掃除をしているというシーンが流れるのです。

「お掃除するのは、ルンバの仕事。話し合うのはあなたの仕事。」


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どうやら、メインターゲットは30〜40代としているようで、子育てや仕事に忙しい人たちへの“時短家電”ということを、よりアピールしていこうというのが狙いなのですね。

これまで、主婦の嫌い(苦手)な家事といえば、1位:アイロン掛け、2位:掃除などと言われていました。どんなに便利で高機能な家電があったとしても、最終的には人間の手を借りて行わないとならない家事で、洗濯や炊飯のように“家電にまかせっきり”ということができないからというわけです。それを覆したのが、この自動掃除機「ルンバ」といえるでしょう。

今回のCMでも、掃除はルンバにまかせることで家事の時間を短縮し、その分、思いっきり子どもを可愛がったり、時には夫婦で話し合いをしたりと有効に使えますよと伝えています。ルンバの掃除機としての実力が認められ、普及率も高まってきたからこその、いわば第2段階ともいえるステップにきたのだとあらためて知らされた思いがします。

ルンバが2002年に日本に初めて登場した際には、「ルンバって本当にきれいになるの?」「部屋の中を片付けなくてはいけないし、広い家じゃないと意味ないのでは?」「おもちゃみたい」など、マイナーなイメージもずいぶんあり、その価格の高さと相俟って“新し物好きの特別な人たちの掃除機”という位置づけでした。

そんな風評を覆すべく、日本での発売当初は「お掃除ロボット・ルンバ」という名称だったのを「自動掃除機ルンバ」に変更。おもちゃっぽいイメージから、きっちりと掃除をしてくれる実力派の掃除機ということを訴求するようにし、モニターキャンペーン等を繰り返してじわじわと口コミでその便利さが伝わるようにじっくりと時間をかけてきたことが、2010年の大ブレイクと、さらなる訴求につながったのでしょう。

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★ルンバを開発した米国アイロボット社のこと

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ここでもう一つ、ルンバを開発した米国「アイロボット社」のことについて、少しご紹介したいと思います。アイロボット社は、マサチューセッツ工科大学の研究者らによって設立された会社で、今年創立20周年を迎えました。それを記念して、今年10月には、同社のCEOであるコリン・アングル氏が来日、外国人記者クラブで会見を行っています。

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私も出席しましたが、ここでの話でとても興味深かったのが、日本人は「ロボットというと二足歩行のものを考え、かっこいいものを作りたいと考えてしまうが、ロボットとは人間が必要としている作業をしてくれるものであり、研究やデモンストレーションだけでなく、売れるものを作って商品化しなければ意味がない」というものでした。

この20年の間に失敗を重ねながらも14のロボットを作り、ビジネスモデルを構築してきたアイロボット社ですが、現在北米の200ドル以上のクリーナー市場のうち、10%のシェアをルンバが占めるまでに成長してきたとのこと。「イスにぶつかってひっくり返ってしまう」「コードに絡まってしまって困る」というような、課題を解決しながら、消費者の役に立つ知能を持ったものにバージョンアップしてきたことが多くの支持を集めたのだと力説していました。研究者やロボットオタク(←こんな言い方をしていました)のものではなく、実際に使えるロボットでなければならないのだと。

「ハード、センサー、ソフト」の3つが重要なキーワードだが、これからのロボットはソフトウェアの開発に重点が置かれるだろうとも。

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アイロボット社は、軍事用の多目的作業ロボット「パックロボット」を作っており、爆弾処理などでも活躍しています。こうした技術や人工知能が自動掃除機ルンバにも生かされているのは、周知の事実。部屋中をくまなく、しかもエネルギー効率のよい掃除の仕方で行うという実力の裏付けにもなっています。

10月の外国人記者クラブでの会見も、便利な自動掃除機として認知度がかなり高まったルンバを、今一度技術の側面から見てもらうことで性能の高さをアピールするものだったのではないでしょうか。

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最後に、再びCMの話に戻りますが、子育て世代や共働き家庭に照準を当てた“時短家電”という位置づけも大変興味がありますが、私個人としては、今後シニア層や介護をしている人のいる家庭にも広めてほしいと思っています。腰をかがめたり、重い掃除機を引っ張って掃除機をかけるのが辛いという人たちにとって、ボタンを押すだけで掃除をしてくれるのは本当にありがたいことのはず。介護に追われる人にとっても、掃除の手間をルンバが引き受けてくれたら、どんなに助かることでしょう。

でも、まずは30〜40代の人たちに積極的に使ってもらい、それを見た“親世代”に広まっていく…という流れのほうが自然なのかもしれませんね。

2002年に日本に登場しながらも、一度消えかかっていたルンバに脚光を当て、時間をかけて広げてきた日本正規総代理店「セールス・オンデマンド社」の手腕は注目すべきものがあります。ルンバのさらなる人気上昇に火が付くでしょうか。期待がかかります。

(※INSIGHT NOW!に寄稿したものhttp://www.insightnow.jp/article/6084とほぼ同じ文を掲載しています)