2012年08月29日

『日本でいちばん楽しそうな社員たち』〜来店リピート率82%、利益率41%のひみつ

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日本でいちばん楽しそうな社員たち

こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、TKCが発行する「戦略経営者」という中小企業向けのビジネス&マーケティング誌のインタビュー取材を受ける機会がありました。掲載は10月号だそうですが、見本誌としていただいた8月号の「今月の1冊」というコーナーに紹介されていた「日本でいちばん楽しそうな社員たち」(佐藤勝人著・アスコム発行)に心引かれ、さっそくAmazonで注文してみました。

そのおもしろいことといったら! 読み始めたら止まりません。だって、著者である佐藤勝人氏が代表取締役専務を務める「サトーカメラ」では、接客に2時間3時間かけるのも当たり前。6時間ということだってある“非効率さ”。それなのに来客リピート率82%、利益率41%なのですよ。栃木県のカメラ販売シェアは並いる大手家電量販店・カメラ系量販店を引き離して、15年連続ナンバー1。デジタル一眼レフカメラの販売シェアは60%以上にも達するというのですから、すごいではありませんか。

大手のターゲットは、栃木県の人口の10%程度である「カメラを買いたい、興味のある」・・・という人たちだけれど、サトーカメラはカメラに興味のない90%をもターゲットとしてお客さんの『想い出を一生キレイに残すために』をモットーに、接客にあたります。まずはカメラプリントに興味を持ってもらい、1枚1枚の写真を通じて会話を広げ、カメラへの興味へとつなげるやり方は本当に手間がかかりそうにも思います。

でも、タイトルにあるようにサトーカメラの社員さんたちは誰もが本当に楽しそうなのですよね。そこに感動があります。読んでいて、顧客からの苦情電話などに5〜6時間かけるのも当たり前という「ザッポス」のことを思い出しました。

効率化を求める世の中、そして「売れる」ための仕掛けを考えるのが当たり前の世の中・・・その中でサトーカメラで実践されている「売ることの楽しさ」を教えるという話は、本当に心に響きました。

ぜひぜひ、多くの人に読んでほしい1冊だと思います。



2012年08月20日

「もしもの備え」を自分のためでなく、“大切な人に贈る”という提案

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、原宿方面に取材に行く機会がありました。予定よりも早めに着いたので、すぐ近くにあった「無印良品」のお店へ。夏のSALEも終わりに近づいて、魅力ある品が破格の値になっていたのですが、仕事の途中で買い物をするわけにもいかず、残念な気持ちいっぱいで見送りました。そろそろ時間かな・・・と思って取材先に向かおうとした時、お店の片隅にあったパンフレットが目に入り、思わず手にとって、そのままバッグに入れて持ち帰りました。

無印良品の「ITSUMO MOSHIMO」は、「もしもに備えることは、ふだんのくらしを見つめ直すこと」であり、「備えは日常の中にある」として昨年に提唱され、大きな注目を浴びました。そんな「いつも もしも」が2012年に提案しているのは、なんと「大切な人にもしもの備えを贈る」ということ。もちろん、すでに自分の備えはできているはずだから・・・という大前提があるわけですが、「備えを贈る」という発想、素晴らしいではありませんか。

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このA4に折り畳まれたパンフレットを開くと、「15のもしもの知識」が登場します。これは、すべて「いつもの身の回りのものが、もしもの備えになるのですよ」という啓蒙。

最近ちょっと気になる「丁寧に暮らす」という言葉にも通じるものがあります。

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そしてすべてを開いてみると(A4×8枚分の大きさ)、そこには「10のもしもの贈り物」が提案されているのですよね。

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例えば、こんな提案もあります。「同僚から、独立した新人デザイナーへ」

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定番かもしれませんが、「実家の両親へ」というものも。

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ここですごいなと思うのは、こうしたものを「セットにして売っているのではない」ということ。両親の顔を思い浮かべながら、いつもの暮らしに役立つような身の回りのあれこれを選んでみてはどうでしょう?と書かれていて、写真はあくまで参考の品。でも、下着や流せるエチケットシート、歯磨きセットやウェットティシューなど、チェックしてみていくうちに、「なるほど、こんなものがあると役立ちそうだな」という気持ちにさせられます。

母から1人暮らしの息子に贈るセットは、キャスター付きのストッカーに入れて贈る食料品のあれこれ。「食べたら補充しておくことで、もしもの備えになりますよ」というのは、目からウロコの提案だと思いました。こういうことは、自分の家ではやってあっても、「大切な人への贈り物に」なんてなかなか考えられません。

先日、家電関連の製品で「防災用品」にもなりそうなものをご紹介いただきました。こうしたものも、ただ「これがあれば便利ですね」ではなくて、自分が便利に使うだけでなく、「大切な人にプレゼントしてはどうでしょう」と提案するだけで、きらりと光って見えるように思いました。

この提案、ネットストアでも行われています。

大切なあの人に贈る。「いつも」の品で「もしも」の備え。 | 無印良品ネットストア





2012年08月14日

P.G.C.D.〜創業者からの60通のメッセージと、それから。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

今日は私が9年間愛用しているスキンケアメーカー「P.G.C.D.(ページェーセーデー)」の創業者、野田憲男氏のことを紹介したいと思います。実は、このことについては、すでに私が毎月、原稿を執筆しているマーケティング専門誌「月刊アイエムプレス」にて掲載していますので、その時の文章をここに転載させていただきます。

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買収工作の危機を乗り越えた
化粧品メーカーのある取り組み


■社長が毎月送り続けた顧客へのメッセージ

毎月1日になると愛用している化粧品メーカー「P.G.C.D.」の代表取締役社長・野田憲男氏から「ご挨拶」と題したメールが届くようになって5年になる。毎回、1500字近くの長文で季節の挨拶から始まり、新入社員のエピソードや雇用の話、経済の話し、日々の思いなど多岐にわたり、特段商品のアピールをするわけでもない。届き始めた当初は、社長からのメッセージの体裁をとった新しい手法のメールマガジンで、きっとゴーストライターのような専門の書き手がいるのではないかと勘ぐっていたこともある。だが、とりとめのないようでいて、経営理念がしっかりと反映され、社員の一人ひとりを温かくそして厳しく見つめている様子が伝わってくる“社長からの手紙”に、「これは本当に野田氏からの顧客に対するメッセージなのだ」と確信し、いつか心待ちにするようになっていった。
 

■創業10年目に起こった買収工作で出荷停止に

(株)ペー・ジェー・セー・デー・ロジは、前身の(株)ペー・ジェー・セー・デーとして1999年に創業したスキンケアメーカーだ。フランス産の原材料にこだわった洗顔用石けんと美容液、日焼け止め用美容液などを「P.G.C.D.」というブランド名で発売、2ステップのシンプルなスキンケアを提唱し、“ファンデーション不要の素肌美”をコンセプトにしている。インターネットのみでの販売は現在では当たり前になっているが、テレビも新聞も使わずに専用のウェブサイトだけで行うのは当時としてはまだ新しい試みだったといえるだろう。その後、渋谷に自社ビルを建設し、サロンも併設。スキンケア講座を行うなど順調に顧客を増やし、約10年後の2008年3月期には年商18億にまで成長している。

ところが2009年12月、突然の買収工作のため出荷ができない状態となり、約2か月間、同社のサイトにはすべての商品が「欠品」と表示されることになったのだ。買収工作への対抗策として第2会社を設立。これが現在のペー・ジェー・セー・デー・ロジであり、新生「P.G.C.D.」となってから丸2年が経つ。出荷停止となってから2か月目に石けんの発売が再開されたものの、すべての製品がそろったのはそれからさらに7か月後のこと。かなり多くの顧客を失ったことは想像に難くない。 だが、同社は2011年の「Yahoo!BEAUTYあなたが選ぶ通販コスメ大賞」にノミネートされたすべての部門に入賞を果たすなど大きな支持を得て、復活を遂げている。

■トップのキャラクターこそが“ブランド”

月1回の社長からのメッセージは、こうした買収工作というアクシデントの3年前から始まっており、欠品のさなかにはタイトルが「お詫びとご挨拶」と変わりながらも、同社の状況や製品づくりへの思いなどが、相も変らぬ長文で届けられていた。当時のメールを振り返ると「この時期にお叱りに混じってお寄せいただいたお心使い改めてお礼申し上げます。直筆のお便り、お花、さりげなく同封いただいた示唆溢れる書籍。お客様との心の通い合いを宇宙のエネルギーのように感じたものでした。この世には善が溢れています。」とある。同社の製品を愛用している人が自分で使うために一日も早い出荷を願ったというだけでなく、その企業そのものを愛し、応援している様子が伝わってくる。

企業トップの生の声を届けることでブランドの個性を磨きたいと、月に一度メールを定期的に送ってきたという野田氏。今では企業経営の悩みを相談するメールが来たり、子育てに関して父親の役割について質問されたりとビジネスを超えた信頼関係を築きあげており、“トップのキャラクターこそがブランド”だと実感しているという。これはツイッターやフェイスブックなどのSNSの原型ともいえる形なのではないだろうか。4月からは双方向でのコミュニティの質を高めるべくステップアップを図ると聞いてわくわくしている。

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こうしてこの春、60通目をもって「社長からのメッセージ」は一旦終了したのですが、2か月後の6月に希望者を募って再開されています。実はすでに64歳になられるという野田氏は、この4月から社長の座を息子に譲ったのでした。その後、どんな形でコミュニケーションを再開するかについてはずいぶん話し合いがもたれたようですが、野田氏からのメッセージは、これまでどおりの「メール」という形で残すのが一番ではないかと。

同社はWEBサイトも刷新され、新たな息吹を得て、さらに飛躍しようとしています。

私自身が9年間も愛用しているのは、ものづくりへの姿勢や顧客へ真摯な対応というのもありますが、「ファンデーション不要の素肌美」を目指すというコンセプトが気に入っているから。それに肌にも合っているのでしょう。ここ1〜2年、テレビや雑誌などへの出演が増え、収録や撮影時にはどうしてもファンデーションを塗らないといけないために、なかなか“素肌美”をお見せすることができないのですが(笑)、普段の打ち合わせ等では「ポイントメイクのみでファンデーションなし」の姿勢を貫いています。

こんなP.G.C.D.の誕生に至るまでのストーリーについては、野田さんご自身が2006年1月31日〜12月29日の1年間かけて、ブログに綴っていますのご興味がある方はぜひ。

P.G.C.D. STORY:




 

2012年08月13日

“東北福興弁当”のお品書きと、あぶくま食品の「若桃の甘露煮」と。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先週、出張で久しぶりに仙台を訪れました。お手伝いしていた某製薬会社の会員向け冊子の仕事や、売り場作りのアドバイスの仕事で、足しげく通っていたこともある仙台や石巻の街。震災以前に仕事が終わっており、震災以降もなかなか足を運ぶきっかけがなかったのですが、今回、3年ぶりの再訪となりました。

学ぶことが多く、実りの多い出張を終え、帰りの新幹線での昼食にと仙台駅で買い求めたのが「東北福興弁当」。“みちのくのおいしいを集めました。”というキャッチフレーズに惹かれたこと、少しでも復興のお手伝いになればと思ったのですが、おいしさだけでない思わぬ気づきがたくさん詰まったお弁当でした。

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包みを開けると出てきたのは、「お品書き」。よくあるのは、献立表のように文字だけで書かれたものですが、こえれはお弁当の写真がまん中に配置され、その1つ1つの説明が吹き出しで書かれています。

1つ口に入れるたびに、「これはどこの何という名産なのだろう?」と照らし合わせたくなるのが人情というもの。「秋田県産“比内地鶏”の煮卵」とか「青森県産さめフライ」「山型庄内浜産さわらの“つや姫”麹醤油漬焼き」など、どれもこれも滋味あふれるものばかり。

肝心のお弁当そのものの写真を撮るのも忘れて、無心になってお品書きを確かめつつ、ひたすらお弁当を味わいました。

で、このお品書きが素晴らしいのは、これだけじゃないんですね。実はここからが重要ポイント。

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何気なく裏を返してみると、そこには「東北福興弁当に盛り込まれた、東北各地の素材と食産業事業者のご紹介」とあり、表のお品書きに☆が付けられたお料理の名前と、それらを提供している業者さんの名前が書かれているではありませんか。

つまり、「これ、おいしいな」「おっ、今度、うちでもこの食品を使ってみようか」と思ったら、ちゃんと連絡が取れるように配慮してあるのですね。これこそ「福興ならぬ復興のお手伝い」ではありませんか。

この「東北福興弁当」は、中小機構東北の協力を得て、日本レストランエンタプライズが製造・販売しているものですが、大変素晴らしい試みだと思いました。

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中でも私が「これはおいしい!でも、何だろう?初めての味だけれど」と心を惹かれたのは、あぶくま食品さんの「福島県産若桃の甘露煮」でした。

気になって調べてみたら、この「若桃の甘露煮」というのは、漬物製造会社のあぶくま食品が福島大学などとの共同で開発したもので、今から3年前の2009年から発売されているようです。これまで捨てられてしまうことの多かった若桃を活用して、全国2位の桃の産地である福島県の新たな食材として広めていこうとしたものなのですね。

直径3センチメートル前後の小さな青い桃を加熱して自然な甘みを生かして種まで食べられるように仕上げられており、ほんのり甘く、香りも上品で本当に美味。特にお弁当の箸やすめ的な役割として光っているなあと思いました。

私は福島が桃の産地だということさえ、あまり知らなくてお恥ずかしい限りですが、今回のお弁当での出逢いをきっかけに少しでも多くの人に知ってもらうお手伝いができたらと勝手に思っています。

検索したところ、あぶくま食品産の「若桃の甘露煮」にかける情熱を記したブログも発見しましたので、ご紹介します。

あぶくま食品株式会社若桃の甘露煮へのこだわり|もったいないから生まれます。

2012年08月07日

粗利益率38.9%、「でんかのヤマグチ」の見える化とは?

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

日経トップリーダー8月号の特集は「業務向上の切り札 見える化大作戦」。中でも目を引いたのが、町田市の家電販売店「でんかのヤマグチ」の社長、山口勉氏へのインタビュー。メーカー、流通共に、家電業界の不振が伝えられる中で、「でんかのヤマグチ」の2011年3月期の売上高は約13億円。粗利益率は38.9%という高収益。安売りをしないかわりに、地道な訪問営業を重ね、電球1個でも取り付けにいくなど、地域密着型の家電店として業界内だけでなく、経営者たちの間でも広く知られるお店です。

さて、その「でんかのヤマグチ」が行っている「見える化」とは? それは毎日粗利益率を表に手で書き込み、過去と比較しながらすぐに対策を打つことだといいます。サッカーやバレーなどの監督と同じように、山口社長自らが、一番最初に結果を見てショックを受けたり、喜んだりすることで社員全体の気持ちを1つにしていくのだといいます。

出張先でもFAXで報告させて常に把握しておくといいますから、さすがです。経営の状態を常に「見える」ようにしておくことこそが、経営者として最も大事なことなのですね。

とはいえ、私自身がインタビューを読んで最も心に残ったのは、こうした数字のことではないのです。私も一経営者でもありますが、残念ながらというか、恥ずかしながら数字には弱いほうで、どれだけお役立てるような仕事ができたかどうかなど、自分自身の充実度や達成感のようなものを優先してしまうんですよね。

そんな私の心をとらえたのは、「でんかのヤマグチ」が最近最も力を入れているという「顧客の見える化」ということ。顧客がどんな家電をいつ買ったのかがわかれば、提案の幅が広がるからと、同店からの購入分だけでなく、営業担当者が訪問時に他社で購入した家電に気づけばそれを聞き出して顧客台帳に反映しているのだといいます。

今は大手家電量販店でもポイントカードなどの仕組みで、ある程度は購入履歴が把握できるかと思いますが、それを顧客への提案に使うまでには成熟していません。なくしてしまいがちな保証書も、購入履歴がわかれば一括で管理できるような仕組みがあればいいのにという声も聞きます。

必要としていないものの押し売りはいけませんが、そろそろメンテナンスが必要なころに訪問して、様子を聞く。やり方がわからないようなら、アドバイスしたり、手伝うなどして、部品交換が必要なものは用意する・・・そんな地味な1つ1つの行いが、顧客との信頼関係を生み、「ここで買えば安心」という気持ちを培うことができるのだと思います。

みんがネットで買うようになれば家電量販店も電器店もいらなくなるというような理論を持ちだす人も増えているようですが、本当にそうでしょうか。まだまだ家電量販店にもきっと打つ手があるはず。それはたぶん、こうした「顧客の見える化」あたりに鍵があるように思います。


2012年08月06日

これぞコト提案〜西友の「KY TIMES」が面白い!

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

以前から気になっていて、ぜひ書こうと思っていたのがSEIYU(西友)のチラシ「KY TIMES」のこと。チラシというより西友が発行するフリーペーパーと言ったほうがいいかもしれません。

8ページの構成でちゃんと目次もあるし、いわゆる“巻頭特集”では、「子どもの想像力をはぐくむ宮澤流プラレール」と題した企画が組まれています。宮澤雅文さんとは模型作家の方だそうで、業務用ジオラマ制作のほか、ジオラマ講師としても活躍していらっしゃいます。そんな宮澤さんにプラレールの魅力について語ってもらっているのですが、これが本当に楽しい! すでに成人してしまったわが家の子どもたちもプラレールでどんなに遊んだことでしょう。

いや、実は本当に楽しんだのは、大人たちだったりするのですよね。わが家の長男が2歳くらいのときに、家人の同僚2人が遊びに来て泊って帰ったことがあるのですが、その際にはまったのもプラレールでした。だって、レールや小物などがこれでは足りないと、わざわざ買いに行くほど熱中し、狭いアパートの部屋いっぱいにプラレールワールドを繰り広げたのですから。

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というように、子どもよりもたぶん父親が熱中すること間違いなしの「プラレール」を使ったジオラマ作り。これを読んだら、西友のおもちゃ売り場に行きたくなるに違いありません。紙面の下のほうには、アンパンマンやリカちゃんなど、プラレールには興味のない子どもに興味を持ってもらえるようなおもちゃ情報も載っています。

それにしてもすごいのは、プラレールの広告なんて、ほんの少しで、ひたすらジオラマ作りの楽しさについて展開されているのですよね。まさに「コト提案」。夏休みに、どこかに行かなくても、何だか楽しく過ごせるような気がしてくるところが素晴らしい。

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P4-5では、「イクメン」の方々の座談会(というか子育てオフ会)の様子が紹介されています。このあたりも、プラレールで遊んでばかりではなく、日頃の育児にも協力するのがかっこいいパパなのだと提案していて、世の中のママたちの気持ちを代弁していて素晴らしいです。最初からイクメンの話でなくて、プラレール→イクメンという流れが絶妙ですよね。

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続くページでファッション関係のセールの話が出てきて、ようやく西友のチラシっぽい感じになってきますが、それでも、「何をゲットした?」というの主題なので、思わず「何を買ったのだろう?」と目を凝らして読んでしまう仕掛けに。

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ファッションの隣のページの「今月の指名買い!」では、何と16インチのLED液槽テレビが9999円! オリンピックという言葉が使えないために「スポーツのビッグイベントもヒートアップする時期〜」と始まり、スタンド込みでも1.4kgと軽いので、キッチンや寝室など見たいところに気軽に運んで楽しめますよとセカンドテレビの便利さをアピールしています。

こういうふうに書かれたら、使っているシーンが目に浮かんで、「10000円を切る価格だし、うちにも1台買おうか」なんて思うパパや、「ねえ、キッチンでみられるなんていいわね」というママも出てきそうです。

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そして終面では「元気のもと」と題して、食の話題が。カラフルな食材を使った、ホットプレートでのスタミナ煮の提案とは、さすがです。

以前はこの「KY TIMES」、地の色が黄色い意表をつくものだったのですが、いつのまにか、普通のフリーペーパーっぽくなっていました。とはいえ、読むのが楽しくてとっておきたくなる点は変わりませんし、ある意味、目に優しくなったかも。

ちなみに、皆さんもすでにご存知かと思いますが、「KY」とは「空気を読めない」のではなく「カカクヤスク」を意味します。こんなフリーペーパー風でコト提案満載のチラシも、本家のウォルマートのものを継承しているのでしょうか?ウォルマートのチラシ、ちょっと気になります。