
こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。
ベビーブームの時に生まれた団塊の世代が定年を迎え、高齢者の人口比率がますます高まって、狙うは“シニア市場”だといわれています。私が専門としている家電分野もまたしかり、いわゆるディンクス等の高所得の少人数世帯に加え、子どもが巣立った後の夫婦二人世帯向けの「小さくて高機能”な家電が注目されています。
そして、またアンダーウェアやパジャマ、レッグファッションなどの繊維業界も、決して見過ごすことができないのが、このシニア市場なのです。「シニアのための下着」というと、たとえば新聞の全面広告などに見られる「漏らしても安心」「100CCまでしっかり吸収するから、旅行も楽しめます」などというものを思い浮かべる方が多いかもしれません。若い人から見たら、“介護される一歩手前”というイメージでしょうか。
ところが、まだそこまでは行かなくても、男性の場合、40代後半から50代になるとトイレに行った後の“切れが悪く”なり、スラックスへの染みが気になる・・・という人もだんだん増えてくるのだとか。

また、体型も知らず知らずのうちに変化して、これまでのシャツでは何となく前身ごろの肩から胸のあたりにかけてシワが寄ってしまったりしてフィット感がなくなるのだそうですね。アンダーウェアがぴったりしていないと、必然的にワイシャツを着た際にもパリッとした風に見えず、姿勢もよくないように見えてしまうといいます。
そんな体型の変化や、トイレの後のちょっとした悩みに応えるべく誕生したのが、グンゼの「GRANDFIT(グランフィット)」というブランド。

化粧品などもそうですが、これまで女性向けには年代向けに「〇歳からの」というような打ち出し方をした商品が多く出ており、ターゲットをしぼって、機能などをはっきりとわかりやすく謳っていますが、実は男性向けにはそうした商品というのはほとんど存在しません。
案外、男性のほうがプライドが高くて、年齢をはっきりと打ち出されるのがきらいなのかもしれません。
というわけでグンゼが今回、新ブランド「グランフィット」について、“50歳からの”とはっきり示しているのは、大きなチャレンジなのです。

よく見ると、このように「尿じみ対応」「はっ水加工」「表面へのしみを防止」などのPOPも見られ、「実はみんな悩んでいるんですよ」ということを説明しています。

先ほど例に挙げたような、いかにも老人向けという下着を通販などで買うところまではいっていないけれど、ひそかに悩んでいたことが解決されたらうれしい・・・というところに着目。デザインも白や黒のブリーフだけではなく、ストライプ柄のカラフルなものも用意されていて、いいなと思います。
それに、こんなふうに説明しておいてくれたら、だんなさんの下着を買いに行った奥さんも「困っているかどうかはわからないけれど、試しに買ってみたら喜ばれるかも」と選ぶかもしれません。
「これは、あなたのために考えたものですよ」ということがしっかりと伝わることって大切ですよね。
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とはいえ、「50歳からの」と打ち出していながら「新・シニアブランド」と名打っているのはちょっとどうかなとも思うのです。だって、50歳の人が「シニアブランド」ということに納得すると思います?
このあたり、「熟年」「壮年」あたりにも通じることですが、何かほかにいい言葉ないかなあと思います。まあ、冒頭の画像に書いてある「新・シニアブランド」というのは、展示会での説明パネルなので、あくまでも業界の内輪向けの話で、顧客に向けて「50歳からの新・シニアブランドです」とは言わないとは思うのですが。
いずれにしても、加齢による悩みに応えるべく機能性は高めつつも、デザイン性は損なわないおしゃれなもの・・・というのは、このようにアンダーウェアの世界にも続々登場してきているのです。今回は男性向けのものに着目しましたが、もっともっと進んでいる女性向けの下着の現状についても、またあらためてご紹介したいと思います。