2013年06月05日

家電の脱コモディティ化の鍵は“デザイン性の追求”

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

ここ2年ほど毎月、マーケティング専門誌『月刊アイ・エム・プレス』にコラムを執筆しています。私が担当しているのは、「ふぉーかす」というコーナーで、『メーカー』の動向をマーケティングの観点から論じるというもの。専門が家電なので、どうしても家電メーカーの話題が多くなるのですが、現在発売中の6月号では、「家電の脱コモディティ化のカギはデザイン性の追求=vというタイトルで記事を書きました。


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今回、例に挙げたのはイデアインターナショナルが手掛ける家電を含めたライフスタイルブランド「BRUNO(ブルーノ)」ですが、すでに複数の大手家電メーカーも「次はデザイン」という発言をしています。

日本では後回しにされてきた「デザイン」というもの、やはりこれからは他社との差別化のためにも大きな比重をもってくると思うのです。というわけで、ここのところ、デザインをテーマに取材を重ねたり、私自身も勉強をしているところですが、その詳細についてはまたあらためて何らかの形で発信したいと思っています。

そうそう、今回の記事には書いていませんが、日本の企業では内部にデザインチームを持ち、外部の工業デザイナーに依頼するということがあまりありませんが、フェラーリのデザインや秋田新幹線の「スーパーこまち」、家電関連ではフジ医療器のマッサージチェア「KEN OKUYAMAモデル」で知られる、奥山清行氏が、南青山にデザインスタジオを兼ねたショールーム「KEN OKYAMA DESIGN青山スタジオ」を今年に入って開いています。

これまで手掛けたデザインが一堂に展示されているだけでなく、その場で購入も可能。また、ここで奥山氏にデザインの相談をすることも可能なのだといいます。

奥山氏が自ら、展示場を作り、中小企業も含めたデザインに積極的に取り組もうとしているという姿勢を見せているのはとても興味深いこと。やっぱり「これからはデザイン」なのだと思わせます。


2013年02月25日

ローソンの宅配サービス「スマートキッチン」を利用してみたら。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

ローソンとヤフー、食材・日用品の宅配サービスに参入 「スマートキッチン」展開 - ITmedia ニュース

ローソンとヤフーの合併企業、「スマートキッチン」による食材や日用品の宅配サービスがこの2月1日から本格的に始まりました。1月17日からお試しセットの販売を開始していて、3人分の食材キットが2種類のほか、副菜のおまけもついて送料込で980円ということだったので、味や食材の新鮮さ、使い勝手を試してみようと注文してみました。

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日にちや時間を指定しての配達もOKなのはとても便利。今回のお試しセットでは、箱を開けると、こんなふうに食材が入っていました。

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「海老とブロッコリーの塩炒めキット」と「まろやか黒酢の酢豚」の2セットに加え、マカロニサラダ、ポテトサラダ、ひじきの煮物、きんぴらごぼうというパックのお惣菜が4種類入って980円ですからかなりのお買い得。通常は、3人分の食材キットが798円程度のようです。

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それぞれのキットの中身も出してみると、カット済みの野菜や、揚げてある豚肉、タレなどが入っています。

届いた翌日の夜、会食の予定があったので、仕事に行く前にこのキットを使って調理してみました。本当は、働くママが帰宅してすぐに調理できるような「お助けセット」というのがコンセプトのようですが、帰りが遅くて夕飯の支度をしていかなければならない時にも便利ですよね(実際は、わが家の息子はもう成人しているので、頼んでおけば夕飯の準備もしてくれるのですけれど)。

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こちらが「海老とブロッコリーの塩炒め」。きくらげなども入っているし、バランスもいいかなとは思ったのですが、私は卵も一緒に炒めたほうが見た目も豪華だし、味がまろやかになっていいのでは?と思って、家にある卵2個を加えて作ってしまいました。

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キットにはかなり細かい料理手順(とはいっても、袋から出して、順に炒めるだけですが)が書いてあるので、子どもや男性、シニアの方にも簡単に調理できるのではという印象です。

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「まろやか黒酢の酢豚」のキットと説明書はこんなふう。

この2品に、おまけで入っていたひじきときんぴらごぼうを加えたのが、冒頭の写真です。もしかすると、この2セットは2回に分けて調理すべきものなのかもしれませんが、わが家のいつもの献立だと、上の写真くらいの組み合わせじゃないと、ブーイングが出そうなので1回で食べることとなりました。

作っている間に私も試食してみましたが、味は濃すぎず、ちょうどよい感じ。とにかく「切る」という手間がないし、調味料もついているので、2品作っても15分かかりません。家にある野菜などを加えてアレンジすることもできるのはいいなと思いました。

で、最終的に思ったのは、こうした食材のキットを一番便利に思うのは、子どものいる働く女性というよりは、シニア層なのではないかなということ。先日、日経MJの消費分析コーナーに、味の素が実施した「シニア調査」の結果が掲載されていましたが、70代後半から食事作りが急に面倒になり、下ごしらえなどを省けるのなら省きたいと思うようになるとのこと。料理そのものをしたくないのではないので、こうした食材のキットはぴったりなのではないかなと思ったのでした。

昨今のシニアの食事については、肉などのタンパク質の摂取が足りないという結果についてもよく話題になるところなので、積極的に肉や魚介類を摂取するきっかけにもなるのでないでしょうか。

「スマートキッチン」の今後のメニュー提案や、実際に利用する人たちの年齢層など、注目していきたいなと思っています。



2013年02月03日

ラベンダーは不眠に効く?〜ラベンダーが苦手なあなたへ贈る安眠の処方とは

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、仕事関連の集まりで、アロマ関連の専門家の方とお話しする機会がありました。実は、前々から疑問に思っていたことがあって、「ラベンダーは安眠をもたらす」というのは本当なのだろうかと。というのは、私自身がはっきり自覚してアロマテラピー関連の香りと出合ったのは、ラベンダーが最初なのですが、なぜだかラベンダーの香りをかぐと、あまりいい気分にはなれず、ましてや安眠にはほど遠い気分になってしまい逆効果だったのですね。

アイピローなどで、最初からラベンダーの香りが仕込んであるものなどを贈り物にいただいたこともあったのですが、それもあまり快適ではなく。私って、変わり者なのかしら、どこかおかしいのではないかしらと思っていたのでした。

でも、その後、たとえばゼラニウムとかローズウッドとか、好きな香りもいろいろあって、必ずしもアロマオイル全般が合わないというわけではなさそうなのです。

それで、たまたま、その方とラベンダーの話をしたところ、「実はラベンダーの香りが苦手な人って案外多いんですよね」と、意外な話しになりました。というのも、どうやら、ラベンダーは気分を鎮静化する働きが強いので、元々低血圧な人がこの香りに接すると、気分が落ち込み過ぎて、不快感を感じてしまうことさえあるのだそうなのです。でも、副交感神経に働いて、気持ちをリラックスさせる働きが強いというは正しいので、何か他のアロマオイルと合わせるのがよいのだそう。その対策として、ローズマリーのような刺激のあるアロマオイルを一滴加えることで、ラベンダーが大好き香りに劇的に変化するのだというのです。

話を聞いたばかりなので、実験してみてはいないのですが、「ラベンダー=安眠」という情報ばかりが先行しすぎて、細かな情報が伝わらないために、ファーストアロマがラベンダーだった人が「アロマ系の香りは合わない」と思ってしまうとしたら残念なことだなと思いました。

私自身が睡眠改善インストラクターの資格を持っていて、ねむりと香り(アロマオイル)との組み合わせもこれからは重要視しないといけないことだとわかっているからこその、「ひとひねりした情報」の大切さなのでした。

あなたは心が安らかになれるお気に入りの香りをもっていますか?


2013年01月27日

エコな竹箸、その次は?

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先週は関西方面への出張があり、新幹線でお弁当を食べながら、のぞみに乗っていました。私のお気に入りは崎陽軒のチャーハン弁当なのですが、時間がないなか、売店を探すことが出来ず、似たようなお弁当とジャスミンティーを買って、乗り込みました。

それでね、ちょっとびっくりしたのは、お弁当に付いてきたのが、いわゆる“割り箸”ではなかったことなんです。環境面への配慮から昨今声高に言われているのが「マイ箸持参」ですが、新幹線での出張のようなときにはさすがに「マイ箸」という日々の習慣とは別の次元になってしまう人も多いかと思います。

割り箸は必ずしも木々をムダに使っているわけではなく、端材を利用していることも多いと聞きますが、今回のお弁当に付属していたのは、竹製のお箸でした。

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「伐採まで3〜5年と成長が早く、節部分も有効利用しています」と書かれています。

なるほど、普通の割り箸よりも環境に配慮したお箸なのですね。

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でもね、あらためて見てみると、このお箸は「割る」必要もなく、持ち手に近いほうには2か所ほど削って、模様も作られています。普通のお箸よりは若干細めですが、これまでのお弁当に付属する“割り箸”の概念とは違う、一段上のお箸なのだと感じたのです。

このシュウマイ&チャーハン弁当をいただいた後、私はこのビニールの袋に再び竹のお箸を収め、一泊の出張を終えて、家に持ち帰ったのでした。

ここまで姿の美しい竹のお箸を作ったのなら、「竹のお箸なんですよ」という説明のその先に、「もしよろしかったら、ぜひ持ちかえって、麺類を食べる時や菜箸としてお使いください」などのメッセージをプリントし、持ち帰りやすいようなパッケージを工夫すればいいのになと思いました。

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実は出張先の打ち合わせの場面で、このお箸のことを話題にしたところ、「私が出席した披露宴では、会場でふるまわれた食事に添えられたお箸と共に、『よろしかったらお持ち帰りください』というメッセージと、持ち帰り用の箸袋がありましたよ」という話が出ました。

すでに、使い捨てられそうなお箸を“持ちかえって再利用してもらう”という動きはあるのですね。新幹線のお弁当はビジネスマンの出張利用も多く、なかなかこの手の環境配慮については同意を得るのは難しいかもしれません。でも、旦那さんが「お弁当についてきたお箸が使いやすくてきれいだったので、持ち帰ったよ」と言ってお箸を渡したら、奥さんからの評価はぐんと上がると思うんです。家に帰ってから、子どもと環境問題について話題にするチャンスかもしれません。

竹のお箸を眺めながら(わが家ではすでに菜箸として再利用中ですが)、「おしい! もうちょっとがんばってほしかったな」と思ったのでした。



2013年01月14日

家電のコンパクト&プレミアム化の潮流に乗せて復活を望む「シャープの食洗機」

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、「小容量化は食品だけでなく家電にも。」という記事を書きました。これまでターゲットを4人家族のファミリー層に絞っていた生活家電ですが、今後はアラサーアラフォー世代のシングル&ディンクス層や、その親世代に向けて、少人数向けでかつプレミアムな家電が求められるのではというのが私の見解です。そうした中で、思い起こされるのが、シャープが2005年に発売し、その後姿を消してしまった、コンパクトな食器洗い乾燥機QR-SC1のこと。シャープは「塩で洗う」という目新しいコンセプトの食洗機を前モデルから投入していて、そのキャッチコピーが「なべピカさらピカ」でした。

この「塩で洗う」というのは、専用のボックスにいつも使っている市販の塩を入れて食洗機にセットしておくもので、イオン交換システムにより、水道水を洗浄時には「汚れを落としやすい硬水」にし、すすぎの際にはすすぎに強い「軟水」にする仕組み。一度塩をセットしておけば、その都度、投入しなくてもすみ、市販の食洗機用の洗剤を使うコースも選択できるようになっています。

「塩」で洗うという発想もおもしろいですし、そこに注目が集まったかと思いますが、私が復活してほしいと思っているのは、この「なべピカさらピカ」の最後のモデルとなるものが、幅45cm×奥行29cm×高さ46cmとコンパクトで、現在人気が集まっているパナソニックのプチ食洗(幅47cm×奥行29cm×高さ46cm)とほぼ同じだということなのですよね。幅なんてプチ食洗よりも1センチ小さいくらいです。洗える食器点数が25点。2人用のコンパクトな食洗機として売り出し、赤いカラーが食洗機としては斬新でした。

でも、2005年の段階では、まだ早かったのでしょうね。というより、訴求の仕方が足りなかったのかもしれません。パナソニックの「水切りかごサイズ」というような分かりやすい表現だったら、もう少し世の中に伝わりやすかったのかなとも思います。それにパナソニックは前年「プチドラム」を投入し、その成功をふまえての「プチ食洗」の投入だったわけですし、その2〜3年前から『ナイトカラーシリーズ』を投入して、夜家事という言葉やアラサーアラフォー世代に向けた家電を『群』で展開していたことを考えると、用意周到だったなと思います。

実は、シャープさんには数年前に「塩で洗うコンパクトな食洗機があったはずだけれど、再び、あれを復活させれば売れるのではないか」と提案したことがあります。でも、テレビ全盛期、AQUOSが売れていた時代ですし、まだ「プチ家電」の潮流が見えるか見えないか・・・の時期だったので、「白物の展開は売れるものだけに絞っていく」ということだったのですよね。でも、昨年、スロージューサーや炊飯器など、再び白物へ注力し始めたのですから、ここでぜひあの食洗機をバージョンアップさせて復活させてほしいと願っています。当時、コンパクトタイプのほうは素材感が少々チープだったようなので、デザインなどにプレミアム感を高めてもらって、赤の色もヘルシオカラーに合わせたら、きっと素敵なものになるような気がします。

家電に限りませんが、時期尚早だったり、提案力が足りなかったりしたために製品のコンセプトは決して悪くない(むしろ、斬新で着目すべきところがある)のに、『売れなかったから』と早々、市場から姿を消してしまうものがあります。でも、これはとても残念なこと。新しい手法を探ることも大切かもしれませんが、案外、過去に遡って製品を見直してみるのも大切なのではと思えてなりません。シャープの食洗機復活、ぜひ!


2013年01月09日

小容量化は食品だけでなく家電にも。

こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、食用油や加工食品などに小容量品が多数登場していて、人気を博しているとのニュース記事が出ていました。

小容量品 おいしいうちに使い切り : ミックスニュース : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

厚生労働省が2012年7月に発表した調査結果によると2011年の平均世帯人員は2.58人とのこと。1989年の調査時に比べて、一人暮らしの世帯は約1.5倍、夫婦のみの世帯は約1.7倍に増えているといいます。約20年でこれだけの数値が出ているのですから今後ますます、1人世帯、夫婦のみ(もしくは2人で同居)の世帯が増えることでしょう。

こうした背景を受けて、食品メーカーでは小容量品の品ぞろえを拡充し始めたことが記事になっていますが、これは食品だけのことではありません。毎日の必需品である生活家電においても、シングルもしくはディンクス向けの製品に注力し始めています。

代表的なものといえば、2011年に初代機が登場した、パナソニックのプチドラム。マンションサイズの防水パン(60cm×60cm)にも置けることや、昼間留守にしているからこそ、外干しができずに必須ともいえる「乾燥機能」がついたコンパクトサイズのドラム式洗濯乾燥機が大きな評判となったのでした。

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続いて、2012年3月には働く少人数世帯にこそ使ってほしいと「プチ食洗」を投入。30〜40代のシングルもしくはディンクス世帯だけでなく、その親世代となるシニア層にも注目されています。

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パナソニックだけではありません。たとえば、三菱電機の高級炊飯器「本炭釜」にも3.5合炊きの『小釜』といわれるものが登場しています。

ここで重要なのは単に少人数世帯をターゲットにしたコンパクトサイズの家電ではないということ。これまでにも、新生活向けの家電として安価なものはそれなりにありましたが、それとは違うのですよね。ファミリー向けで人気があり、プレミアム感もそなえたものを、小型化しているところがポイントなのです。機能もデザインも高水準でありながら、ターゲットはシングルもしくはディンクスのような少人数世帯。少しずつ広まりつつありますが、まだまだ始まったばかり。これから、いっそうこの視点での家電づくりは広まると思われます。

そして、もう1つ。こうした『個』をターゲットにしたものというのは、家族の中で暮らしていたとしても存在するのですよね。

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昨年6月に都内で開催された小泉成器の展示会では「じぶん食」ということが大きなテーマとなって提案されていました。同社はメーカーとしての立ち位置だけでなく、海外家電メーカーをはじめとするさまざまなメーカーの卸も兼業しているため、メーカーの垣根をこえた展示が可能です。

そこで提案されていた「じぶん食」の中には、もちろん一人暮らしをターゲットにしたものもありますが、たとえば社会人になったOLが家族と同居している場合、帰り時間がまちまちで食事が一緒でなかったりすることが多々あります。そうした事例の場合、暮らしぶりは一人暮らしと変わらないのですよね。同居する母親が多少は食事の用意をしてくれているかもしれないけれど、基本的には自分で用意をする。ダイエット中だから、自分専用の食事にしたいという人も案外多いかもしれません。

つまり、住まいがどうであれ、今後ますます増えてくるのが「じぶん食」。昨年、6月に発売されたパナソニックのファミリー向けの高級オーブンレンジ「三ツ星ビストロ」でも、自動メニューの人数設定が、これまでの2人・4人分から1人、2人、3人、4人分とバリエーションが増えていたのが印象的です。発表会の商品説明の際にも「4人暮らしの家庭でも、お父さんの分だけ後から調理する場合、3人+1人になりますし、塾に行くお子さんがいる場合は1人+2人+1人という流れで調理をする家庭もあります」という話がありました。

これまではまとめて作って個々に温めていたものが、よりおいしい“出来立て”を食べられるような設定に変わってきているのが興味深いと思います。私たちの暮らしの変化に合わせて、食品も家電も少しずつ変わってきているのですね。

まだまだ、こうした「生活者のニーズ」を掘り起こしていくと、ものづくりの金塊は眠っているような気がします。


2013年01月07日

未来の顧客でなく、今愛用してくれている顧客こそを大切にする〜シャープの加湿空気清浄機の試み

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

家電を購入する際に、よく聞かれるのは「いつが買い時なのか?」ということ。私が取材を重ねている白物家電は、AV家電と違って、年に1回新製品が登場するというサイクルです。今まで使っていたものが壊れてしまった場合は別にしても、そろそろ買い替えようかと迷っているときや、新たに導入しようと考えているときには、「もう少し待ったほうがさらにいいものが出るかもしれない」と悩んだり、「いや、今のほうが型落ちでお買い得かも」と思ってみたりと、なかなか決めかねるという人も多いようです。

特に、「ここが改善されたらいいのにな」という点がある場合は、改善された新モデルが出るのを待ち望んでしまう人も多いことでしょう。何より残念なのは、購入してしまった翌年に「なんだ、もう1年待てばよかった」と後悔することですよね。とはいえ、私自身は、「買いたいとき、欲しいと思った時が買い時です」と常々、発信していますし、そう思っています。

こんな前置きをしたのはなぜか。昨年秋にシャープから発売された加湿空気清浄機の新製品では、注目すべき試みが行なわれていたからなのです。

空気清浄機といえばシャープを思い浮かべるほど、業界で最大のシェアを誇るシャープ。毎年、さまざまな改良・新提案をした製品を新たに投入しています。昨年末、12月27日の産経ニュースでも、空気清浄機 今年も好調 ウイルス発生前に加湿 脱臭もと報じられました。2012年モデルの加湿空気清浄機ではウイルス対策として「乾燥・低温みはり」機能を搭載してきていますが、あまり目立たないものの、使う際にはとても便利な機能として次の2点がプラスされています。

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シャープの空気清浄機は背面から吸引するため、フィルターも背面にあります。

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集じんフィルターの交換は10年間不要といっても、大きなチリやホコリをキャッチする「プレフィルター」は最低でも1か月に1回はブラシ付きの掃除機で吸い取らないと、空気清浄機の吸引力が落ちて、集じん能力も大きく減退してしまいます。

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新モデルでは、こうしたフィルターの必要な時期をセンサーで見張ってお知らせする機能のほか、掃除機で吸い取らなくても済むような使い捨ての「お掃除らくらくカバー」を3枚付属して、1か月に1回交換するだけでOKということをうたっています。

でも、これだけではないんですね。すでにシャープの空気清浄機を購入して愛用している人も使えるような「使い捨てプレフィルター(6枚入り・892円)」を別売していて、お手入れの手間を省きつつ、機能を維持できるように配慮しています。

そしてもう1つ、加湿機能を使用時にはどうしても気になる、雑菌の繁殖やカビやヌメリ対策として、加湿用のタンクのキャップにAg+イオンカートリッジがつくようになったのも新製品の特徴です。他社の加湿空気清浄機では、こうしたヌメリ対策が充実していたのですが、シャープはこの点がいまひとつ行き届いていなかったのですが、2012年モデルでは改善されて、ぐっと使い勝手がよくなりました。

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こちらのAg+イオンカートリッジ FZ-AG01K1も、なんと2008年モデル以降(一部は除く)のシャープの加湿空気清浄機の加湿用のタンクなら、追加で購入することでちゃんと取り付けられるようになっているのです。

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こうした形状のキャップなら大丈夫なのだとか。Ag+イオンカートリッジが使える適応機種については、同社のサイトに一覧で掲載されています。

購入者からの不満の声を聞いて、新モデルを改良する参考にしているのだと思いますが、その際にすでに愛用している人を置き去りにせず、付属品の追加購入等で同等の機能がプラスされる仕組みを整えるのは、とても大事なことですし、「ファン作り」の基本だと思います。今、愛用している製品を買い替える際にも、また同じメーカーのものにしようと思うでしょうし、追加で2台目、3台目を購入する際にも、そのメーカーのものを購入することでしょう。

未来の顧客のことを念頭に置きがちですが、今、愛用してくれている顧客こそを大切にする姿勢、忘れないでいてほしいと思います。


2013年01月04日

「白濁(しろにごり)ビール」の缶に隠された美味しさの秘密とは?

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あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

あらためまして、顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

年末年始、いかがお過ごしですか。私は12月29日〜1月3日、お休みをいただき、読書三昧の日々を過ごしました。お三が日は、昼間からお酒を飲んだりできて、のんびりできるのもいいですね。年末に家人が、珍しいビールをいろいろと買ってきてくれたのですが、その中でも印象に残ったのが、上の写真の「白濁(しろにごり)」というベルギー直送のビールでした。

名前のとおり、かなり白い色のビールで、濁りもあります。味わってみると、とってもフルーティで香りがよくさわやか。昼間の一杯にぴったりでした。

でも、ちょっと缶の印刷が逆さまで、何だか不思議だなと思いませんか?

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ね、文字を読めるようにするとプルトップ部分は下に来てしまうんですよね。お店でも、このように、底の部分を上にして並べられていたようです。

では、ひっくり返してみましょう。

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よく見ると、プルトップのあるほうにはは、プラスチックのふたがかぶせられているのです。冒頭の画像にも、左手前に写っています。

つまりね、いつもは缶の底を上にして、冷蔵庫に入れておいて、飲むときにひっくり返してプルトップを開けることで、缶の中に沈殿していた濁りがまんべんなく循環するために、ベストな状態で飲めるというわけ。

でも、缶の底に口があるので、汚れを気にする人もいるだろうということで、キャップがかぶせられているのですね。うーん、よく考えられているなあと感心しました。一番おいしく飲んでもらうための工夫、それが「一度缶をひっくり返すこと」とは。そして、缶底の汚れを防ぐために、キャップをかぶせるという心配り。こういうの、いいですね。新年そうそう、おいしさににっこりし、その粋な計らいにうれしくなったのでした。

顧客視点というのは、こんなところに隠れているのではないでしょうか。今年も顧客視点アドバイザーとして、心に残ったマーケティングの手法や商品、サービスについて、なるべくたくさん発信していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。




2012年12月27日

これこそ少子化対策!?日本交通の「陣痛タクシー」と「キッズタクシー」に思うこと。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

日本交通が今年5月から始めた「陣痛タクシー」というサービスをご存じですか? 事前に無料登録をしておくだけで、利用料金+無線での迎車料金400円で出産予定日や急な陣痛の際にも簡単にタクシーを呼ぶことができるというもの。対象エリアは東京23区、三鷹市・武蔵野市に限られていますが、登録者数はかなりの数にのぼり、毎日相応の利用者数があるといいます。

何を隠そう、2人の息子たちの出産経験がある私。特に長男を出産の際には家でのんびりとし過ぎてしまい、気が付いた時には破水して「生まれそう!」という事態に。慌ててタクシーを呼んだものの、すぐには難しいと言われ、恥ずかしながら救急車のお世話になったのでした。そんな私なので、こうした「陣痛タクシー」という試みはとても魅力的に思えます。

日本交通が「陣痛タクシー」開始 妊婦に細心の注意 - SankeiBiz(サンケイビズ)


5月日配信されたニュース記事によれば、『同社は、すべての乗務員を対象に、「妊産婦搬送時の注意事項と対応」と題した講習会を実施した。助産師の指導の下、妊婦の緊急時に慌てず、焦らずに対応できるよう教育し、安全性を高めている』とあります。これなら、もしもの時にも心強いし、家族がそばにいないときに陣痛がきても、落ち着いてタクシーを呼べますよね。

少子化対策云々がよく話題になりますが、こうした出産時の不安を1つでの払拭することも、案外大きいのではないでしょうか。

日本交通のサービスは、この「陣痛タクシー」だけではありません。子どもをドアtoドアで目的地に送り迎えする「キッズタクシー」というものもあるのです。

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子育て経験者、保育士、普通救命講習、救急救命法メディック・ファーストエイド小児プログラムの資格者等で構成された乗務員が担当し、最初の1時間は4550円、その後30分ごとに2050円とのこと。

陣痛タクシー利用時から、こうしたキッズタクシーを利用するまでにはある程度の年月がかかるだろうなと思ったのですが、いいえそんなことはないのです。陣痛タクシーを利用したママと子どもが退院の際や1カ月検診などの健診の際にも利用できる仕組みになっていて、チャイルドシートやジュニアシートも無料で用意してくれるとのこと。至れり尽くせりですね。

日本交通のホームページには、グループ内の7000名のドライバーから選抜された「エキスパートドライバー」が顔写真やプロフィル付きで紹介されています。どの写真も本当に気持ちのよい笑顔で、「これなら安心して任せられる」と誰もが感じられるのではないでしょうか。

今回のサービスについて、たまたま仕事の途中で乗り合わせたタクシー内にあったパンフレットで知ったのですが、まさに少子化対策にもつながるものだなと感心した次第です。元々の強みを生かして、それを発展させ、独自のサービスや製品づくりにつなげるということ、これからのキーワードになりそうです。





2012年12月25日

オフィスのロングセラー商品を「暮らしの便利商品」に〜PLUSのメクールポケットにみる発想の転換

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、付箋などを購入した文具店のレジのところに、「指先のスベリ止めクリーム」と名付けられたキーホルダータイプのものが置いてありました。手書きのPOPには「スーパーのレジ袋やビニール袋が開かなくて、困ったことありませんか?」とあります。

すでに会計を済まそうとしている段階だったのですが、「これも買います!」と追加で購入してしまいました。

わが家では週末に1週間分の生鮮食品などをまとめ買いするため、買い物かごに山盛り2杯分くらいの分量になります。肉や魚などの生鮮食品については備え付けのビニル袋に入れているのですが、これがなかなか開かなくて一苦労なのですよね。時として、指先をなめてみたり、野菜や豆腐についている水分を利用して指先を濡らしてみたり。夏の間はそうでもないのですが、秋〜冬は空気が乾燥しているからでしょうか。滑ってしまって困るのです。

それで、いつも家人と話題にしていたのが「携帯用の滑りどめみたいなものがあったら売れるんじゃないかなあ」ということでした。

家人「あれば便利かもしれないけれど、わざわざ買うかな?」
私「困っている人、多いと思うし、『こんなのあります』がきちんと伝われば売れるんじゃない?」

なんて度々話題にしていたのですが、まさにそんな商品が発売されていたとは!

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500円玉くらいの大きさのケースに、アロエエキス配合の滑りどめクリームが入っていて、いつも携帯できるようにチェーンがついています。

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開けてみると、こんなふう。先週末の買い物の際にさっそく使ってみましたが、袋詰めの作業が断然効率的にできて、うれしくなってしまいました。

ところでこの「メクールポケット」という商品、いつ発売されたものなのか気になり、調べてみたら、今年の10月17日に発売開始されたばかりの新製品だったのですね。

ニュースリリース/プラスからの新提案 めくる時、もうイライラしない!指先のスベリ止めクリーム 携帯用「メクール ポケット」新発売-

おもしろいなあと思ったのは、この滑り止め「メクール」というのは、オフィス用として1967年から愛用されているロングセラー商品だということ。それを45年の歳月を経て、“暮らしの便利商品”へと転化させたことが素晴らしいなと。

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こちらがオフィス用の「メクール」。水の入らない滑り止めとして、愛用されてきたのですね。

ちなみに「メクールポケット」ですがアロエ入りのグリーンのもののほかに、コラーゲン配合のピンクのものがあり、ケースの中のフィルムを差し替えることで、自分仕様のケースにカスタマイズできるようになっています。これからの1つのあり方として、家電もそうですが『カスタマイズ』っていうのは外せないと思うのです。

しかも、プラスのサイトには、着せ替え画像がダウンロードできるようになっているのですよ。単価210円の安価な商品ではあるけれど、細かな点まで配慮が行き届いていて、あっぱれ!と思いました。メクールポケットのサイトはこちら

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まだ、発売されて2か月なので、こうした便利なものがあることを知らない人も多いことでしょう。今後は、スーパーのレジ脇のスペースに陳列して、ぜひ多くの人に知ってもらいたいし、そうすれば大ヒット商品になるかもしれないと密かに期待しています。




2012年11月19日

拡大する“袋麺市場”、今こそ全国各地の個性派の台頭を!

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。


東洋水産の袋麺「マルちゃん正麺」が売れている。同製品の特徴は、生麺のようなコシのある食感にある。昨年11月の発売開始当初、同社は年間100億円を販売目標としていたが、200億円に上方修正。生産ラインを増設し、対応する(YAHOO!ニュース)


最近、何かと話題の袋麺。マルちゃん「正麺」が年間販売目標を2倍に上方修正したことも注目に値しますが、何より、カップ麺にお株を奪われていた袋麺市場が「シェア争い」ではなく、2008年から2010年まで3年連続で縮小傾向だった「即席袋麺」市場が、2011年度は前年比105%増のプラスに転じ、「市場拡大」していることがものすごいことなのだなあと思います。

「正麺」のほかにも、カップ麺の人気ブランド「日清ラ王」の袋麺を8月27日より関東甲信越・静岡地区で先行発売。サンヨー食品は「サッポロ一番 麺の力」を発売。明星食品「チャルメラシリーズ」も7メニューのリニューアルをしています。この袋麺戦争ですが“戦争”というくらいですから、敵対するものがあってこそ。こんなふうに、いわゆる即席麺市場の王道たちが、『本格的な麺の食感』をキーワードに新製品やリニューアル製品を投入して、さらに市場を活気づけようとしているのですね。

でも、袋麺って実は全国各地で人気を集めている“知る人ぞ知る”個性派麺もけっこうあることをご存じですか?

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これは、某大手酒店の売り場ですが、いわゆる“棒ラーメン”的なラーメンのほか、四角い袋入りの即席麺が個性豊かに勢ぞろいして実に楽しいのです。

中でも、異彩を放っていたのが、白地に目と鼻を描いた「白くま塩ラーメン」。にぎやかな彩りのデザインが多い中で、「え?これ何?」と思わず手に取らせるシンプルかつインパクトのあるデザイン。調べてみたところ、このラーメンは札幌の円山動物園で人気の白くまをモチーフにしてデザインされたコラボ商品とのこと。

麺は生麺を丸3日間熟成乾燥させ、コシのある麺に仕上げ、スープは香味野菜の旨みたっぷりのあっさり塩味。札幌円山動物園は絶滅危惧種に指定されたホッキョクグマの飼育と繁殖に取り組んでおり、この商品の売上の一部は同園に寄付されるそうです。

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ということで、私自身も思わず1袋購入。1袋160円だったので、普通の袋麺よりは少し高めだったけれど、買わないわけにはいかなかったのでした。

先の売り場の様子を見てもわかるように、日本各地のこだわりの袋麺というのはけっこうたくさんあるものなのです。せっかくの袋麺人気なのですから、大手ばかりの製品を置くだけでなく、こうした個性派麺にも脚光を浴びさせてほしいところ。

拡大している市場だからこそ、新たな切り口で更なるファンを獲得すべく、メーカーもお店も工夫をしてほしいと思います。


2012年10月24日

ケルヒャー ジャパンの成長理由は“カスタマーセントリック”

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

毎月、連載執筆をしているマーケティング専門誌、月刊「アイ・エム・プレス」2012年11月号が発売されました。いつも業界情報を切り取る「ふぉーかす」というコーナーの『メーカー』というジャンルのページに原稿を執筆しています。

今号で取り上げたのは、高圧洗浄機で知られるドイツのメーカー「ケルヒャー」の18番目の現地法人となる『ケルヒャー ジャパン』の顧客満足度を高める社員たちの取り組みについて。

ケルヒャーは業務用・家庭用を合わせて、世界190カ国で約3000種類の製品を展開している世界最大の清掃機器メーカーですが、ケルヒャー ジャパンは世界第5位の売上を誇り、昨年11月には100億円の売り上げを達成しています。

そんなケルヒャー ジャパンの2012年度の目標は「社員満足&顧客満足ナンバー1」というもの。社員の満足度が高さが顧客満足度にもつながるというのが社長の佐藤八郎氏の考え方なのです。

8月に宮城県にある本社や家庭用製品修理センターを訪れて、取材をしてきましたが、修理センターでの取り組みについては目を見張るものがありました。中でも心に残ったのが顧客へのアドバイスレターやフォローアップの電話です。修理依頼品をみると、顧客がどんな使い方をしたのかが予測できるため、今後再び不具合を起こさずに快適に使ってもらえるようにと、懇切丁寧なアドバイスレターをいうのです。製品購入から修理依頼までの期間が短い人には、さらに電話をして説明をすることもあるという念の入れよう。

しかも、このエピソードにはまだ裏があって、こうした取り組みは社員が自発的に行っていたことで、社内で決められたことではないというのです。たまたま佐藤社長の知人がケルヒャーの製品の修理を頼んだ際に、こうした対応が行われていて素晴らしいと社長に連絡。そこではじめて、そうした取り組みが行われていることを知ったとのこと。

まさに「社員満足度=顧客満足度」なのだなと思わされるエピソードではありませんか。ケルヒャーが全世界に掲げる中期戦略のキーワードは「カスタマーセントリック(お客さま中心)」だといいます。IFAでドイツ本社のブースも取材してきましたが、世界1の清掃機器メーカーとなって多くの人に愛される理由がわかったような気がします。



本誌では、もう少し丁寧に説明していますので、興味をもたれた方はぜひ。

■月刊「アイ・エム・プレス」 http://www.im-press.jp/magazine/index.html


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2012年10月22日

宮崎県庁にみる“おもてなしの心”の大切さ

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先日、出張で宮崎に行ってきました。福岡、佐賀、長崎には何度も行ったことがあるのですが、宮崎は初めてのこと。初日の仕事が早めに終わったので、“観光名所”の1つである宮崎県庁に足を運んでみました。

JR宮崎駅から徒歩10分程度のところにある宮崎県庁ですが、外観の写真だけでも撮って帰ろうと思っていたところ、門のところにいた警備員の方がにこやかに「どうぞ中に入ってみてください」と声をかけてくださいました。それならせっかくだからと、そのまま奥の入り口へと足を進めると、入り口付近に立っていらした職員の方もにこにこと笑顔で声をかけてくださり、「これが資料になります」と県庁の歴史などを記した印刷物を手渡してくれたのです。

歴史ある建造物のあちらこちらに、まるで博物館のごとく説明書きがあり、館内ですれ違った職員の方が「ここを進むと、ぐるっと一周できるのでどうぞ」と案内してくれます。

決して押しつけがましくなく、のんびりとした口調なのですが、絶妙なタイミングで声をかけてくれるため、来訪者がとてもリラックスできるのですよね。こうしたサービスこそ、まさに「おもてなしの心」なのだと実感しました。

翌日、利用したタクシーの運転手さんの話によれば、前知事の東国原英夫氏の功績は本当に大きかったとのこと。4年の任期の間に宮崎県の知名度を高め、観光客の数を増やし、産業を活性化させたことは揺るぎない事実のようです。東国原氏が任期満了後は、明らかに県庁を訪れる人も減り、観光客そのものも減少傾向にあるそう。でも、宮崎の名産品のことなど、広く知れ渡ったので、そんなにすぐには忘れられないはずなので、これからは自分たちががんばらないと…と話してくれました。

かくいう、このタクシーの運転手さん自身も、おもてなしの心がいっぱいで、慣れない土地での移動を本当に助けてくださったのでした。

たぶん、宮崎県民ならではの穏やかでのんびりとした気質や、訪れる人を温かく迎えようという“おもてなしの心”と、東国原前知事の熱心なPR活動は根源が同じところにあるのではないでしょうか。

「おもてなし」とは、表も裏もない心でお客様を迎えること、言い換えると、見えるところもそうでないところも同じ気持ちでお客様を迎える・・・ということでしょうか。

サービスの真髄とは「おもてなしの心」にあるというのは言い古された言葉かもしれませんが、宮崎を訪れて、そんなおもてなしの心に直に触れ、その大切さを心に刻んだのでした。

2012年10月18日

ビックカメラ×ユニクロ、コラボで生まれた“デザイン洗濯機”

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

昨日はテレ東さんの番組のロケ、そして今日は女性誌の撮影と、連日新宿の「ビックロ」にお邪魔しています。たくさんのお客様が来店している中で、テレビカメラの前で話したり、時には演技をしたり、モデルさんのようにカメラの前でポーズをつくるのは、気恥ずかしかったりもしますが、その一方で、ビックカメラ、ユニクロの双方の広報担当の方と知り合うことができ、いろいろとお話をうかがうことができて、よかったなと思っています。

まだ9月27日にオープンしたばかりのこともあって、あちらこちらで話題になっているビックロですが、コラボレーションによる思いがけない相乗効果がどんどん生まれていて、常に模索しながら進化しているのが、このビックロのよう。

今日、ユニクロのほうの売り場で目を引いたのが、何と、パナソニックの「プチドラム」にカラフルなドット柄を施した“デザイン洗濯機”。通常のプチドラムにドット柄のステッカーを張り、その表面をラッピングしているものなのですが、私の撮った写真よりも現物はずっとずっと可愛いしオシャレ。それをユニクロのドット柄のファッションに身を包んだマネキンと一緒に展示しているのですから、本当に楽しい売り場になっています。

元々、「プチドラム」というのは、これまでドラム式洗濯機を置きたくても、大きすぎて置けなかった人のために、マンションサイズに小型化して誕生したもの。つまり、新宿東口のユニクロを訪れるような世代にぴったりの洗濯機なのですよね。

それに加えて、ユニクロの来店客のイメージに合わせたような「デザイン洗濯機」を提案して注目させる・・・いいですよね。ドット柄はいらない人でも、「あれ?こんな小さなドラム式洗濯機あったの?」と注目してもらえるきっかけになりますもの。

進化なのか、変化なのか・・・とにかく日々変わっていく売場や商品提案力に目が離せないなと思います。

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2012年10月14日

“顧客視点アドバイザー”がメジャーな肩書きになった日。

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

私が自ら名付けた肩書き「顧客視点アドバイザー」を名乗ってから、すでに6年になります。当時は、「株式会社神原サリー事務所」をおこしておらず(この10月30日で丸4年)、友人と2人で立ち上げた「合同会社Asty&Sally」(2006年12月〜2008年9月)のころ、2人でずいぶん考えて生み出した肩書きが「顧客視点アドバイザー」だったのです。

このころ、私自身は家電分野で日経トレンディネットに執筆をしたりと、いわゆるジャーナリストとしての活動をしていましたが、Asty&Sallyで目指したのは、『企業と生活者の橋渡し』ということ。よく“女性視点”とか“生活者視点”という言葉は使われますが、そうではなく、もう少しマーケティング的に説得力のある言葉を使いたいと思い、編み出したのが「顧客視点アドバイザー」だったのです。

「顧客視点アドバイザー」の名称は、合同会社Asty&Sallyを解散し、個々に歩んでいくことになったあとも、個々に名乗っているので、検索してみてもあがってくるのは私か彼女のいずれかでした。

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これが、当時(まだ本名で仕事をしていたころ)の名刺です。

その後、家電分野で、自分自身がジャーナリストとして執筆する以外にも、さまざまなメディアから出演依頼があり、その際の肩書きとして「顧客視点アドバイザー」を名乗ろうとしたことも多々あるのですが、世の中に周知されている肩書きではないことなどから、新聞や雑誌ではなかなかこの「顧客視点アドバイザー」を取り上げてもらえませんでした。

また、家電関連ではやはり「家電〇〇」と名乗ったほうがわかりやすいこともあり、「家電コンシェルジュ」という肩書きと併記して名刺を作るようになったのです。一般の生活者向けに名乗るときには「家電コンシェルジュ」であり、メーカーさんなどの企業の方へのコンサルティングの仕事の際には「顧客視点アドバイザー」と名乗るようにしながら、地道に活動を続けるうちに、どちらも広く認めてくださるようになり、とてもうれしく思っています。

今では、新聞・雑誌・テレビ等での紹介の際には「家電コンシェルジュ&顧客視点アドバイザー」としてプロフィルを紹介されることが多いですし、そして先日のCEATECでの講演の際にも「家電コンシェルジュそして顧客視点アドバイザーとして活躍されている」という表現で紹介していただきました。

そして、今回、びっくりしたのが、ITビジネスアナリストの大元隆志氏が、Yahoo!ニュースに新設された「個人カテゴリ」の中でオーサーとして執筆を開始する際に、自らの肩書きを「ITビジネスアナリスト/顧客視点アドバイザー」と名乗っていること。この記事で、大元氏は「一顧客」という視点で、「消費者からすればこう見えているのでは無いか?」ということをメーカや業界に訴えかけていきたいという思いで『顧客視点アドバイザー』と名乗るようにした」と書いています。

私自身がこのブログの初回に下記のような記事を書いたときの気持ちと同じなんですね。

ご挨拶にかえて: 神原サリーの顧客視点マーケティング

実は、大元氏とは今年の4月初旬に開かれた、IT関連に造詣の深い方々が集まるお花見の会で初めてお目にかかり、まさに意気投合して、1時間くらい熱心に話しこんだのでした。そうした経緯があるので、大元氏が私の「顧客視点アドバイザー」という肩書きに強い関心を持ってくださったのだなと、感慨深い気がしています。

消費者の思いや願いを企業に伝え、企業の思いを生活者に伝える橋渡し役でありたいと願って、自ら名付けた「顧客視点アドバイザー」という肩書きが、これからもっと広まるかもしれません。でも、その一歩を踏み出したのがまだヒヨッコだった2006年当時の私だったこと、ここまで続けてこられたことを誇りに思って、これからも歩き続けたいと思います。

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大元 隆志の記事一覧 - 個人 - Yahoo!ニュース



2012年10月12日

新宿「ビックロ」の売り場を見て思うこと

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

9月27日にオープンした新宿の「ビックロ」に、ようやく行くことができました。ビックカメラとユニクロのコラボレーションによる、その名も「ビックロ」。話には聞いていたけれど、どの程度融合した売り場ができているのかと興味津津だったのです。

私は丸ノ内線の新宿三丁目駅から直結している地下の入り口から入ってしまいましたが、1階のエントランス部分には、こんなふうにユニクロのウルトラライトのダウンベストを着たマネキンが、エレクトロラックスの人気クリーナー「エルゴラピード」を持っていて、「おお!」とうなってしまいました。カラフルですし、楽しいです。ユニクロとビックカメラ(=家電)が融合しているなあということを象徴していますよね。

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右手には同じくダウンベストを着たマネキンがダイソンのクリーナーDC46を手に持って掃除をしているではありませんか。ベストのカラーとクリーナーのカラーを合わせているところもお見事です。

実際にはユニクロとビックカメラの売り場は階によって分けられていて、エントランスでの展示はあくまでイメージではあるのですが、それでも生活家電売り場の暖房家電のコーナーのそばに、ユニクロのリラックスウェアなどが展示されていたりして、それとなく誘導しています。

数年前の倉庫のような家電量販店から見たら、ずいぶん様変わりしたと思いますし、異業種とのコラボはこれからの店舗のあり方を示していると思います。ただ、1階以外は、まだこなれていない感じなので、さらにもう一工夫が欲しいところ。

来週水曜日には、テレビのロケで再び「ビックロ」さんにお邪魔するので、理想の形はどんなものなのか、さらに考えてみたいと思います。

2012年10月08日

先見の明!?8月に書いた記事と同じテーマが、またまた日経MJに登場です

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

先週、10月5日の日経MJ14面では東京都町田市にある電器店「でんかのヤマグチ」のことが大きく取り上げられていました。

このコーナー、先日も「西友のKY TIMESのこと再び〜顧客に何を伝えるか」という記事にてお伝えしたように、1か月前にここで取り上げた西友のフリーペーパー形式のチラシ「KY TIMES」のことが、同じ視点で記事にされていて、私の目のつけどころは間違っていなかったのだなと思ったわけですが、またまた、私が8月7日にここで取り上げた『粗利益率38.9%、「でんかのヤマグチ」の見える化とは?』と同じ内容。

最も、私の8月7日の記事のそもそものきっかけといえば、日経MJと同じ系列の日経トップリーダーなので、決して私の記事がヒントになって、MJの記事になったなんてことはないと思うのですが、いずれにしてもMJよりも先行してここで取り上げていることをうれしく思っています。

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先日、ご紹介した 『サトーカメラ』にしても、『でんかのヤマグチ」にしても、独自の手法で顧客と向き合い、大手家電量販店とは異なるアプローチ(=価格競争ではない)でがっちりと顧客の心をつかんでいるのですよね。

まだ、どちらのお店にも実際には足を運べていないので、ぜひお店を訪れて接客を受けてみたいものだと思っています。



2012年10月04日

買い物に行けないママのためのサービス「Amazonファミリー」、さすがです。


こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

Amazonの新しいサービス「Amazonファミリー」をご存知ですか。私は、Amazonプライム会員になっているため、当日もしくは翌日配達のお急ぎ便を利用でき、本当に便利だなあと思っています。3900円の会費は必要だけれど、それこそ消しゴム1個からでも無料で配達してくれるし、重いものでも、家のドアまで配達してくれるなんてある意味夢のようです。

こうしたお届けサービスは、働いている女性やネットに抵抗のないシニア層にも便利ですが、実はよく考えると、出産直後や赤ちゃんを置いたまま買い物に行くわけにはいかない「ママ」が一番、「よかった!」と感じるもののはず。

今回の新しい「Amazonファミリー」サービスは、普通の Amazon プライムとは違って、定期おとく便だとおむつやおしりふきが15% off になったり、限定サービスやセール等のお知らせがあるもよう。しかも、最初の3ヶ月間無料でスタートできるということで、まずはファン作りをして末永く利用して欲しいという作戦のようです。

こうしたサービスを新たに立ち上げなくても、普通にAmazon プライム会員になって、お急ぎ便や日時指定サービスを利用して、おむつを買ったり、日用品の買い物に役立てばいいのかもしれないけれど、「Amazon ファミリー」という名前をつけることで“私へのサービス”だと気づかせてくれるところが、さすがとかと思うのです。

今あるサービスを上手に使える人だけではなく、こんなサービスもあったのだと気づかせてくれること、実は大切ですよね。それはサービスてなくても何かの製品でも同じこと。それは私には関係ないと思っている人に、「これいいな」と思わせること、新たな提案が大切なことだと思うのです。




2012年09月30日

歯磨き粉もシャンプーもキーワードは“個人ニーズ”への対応

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

突然ですが、家に歯磨き粉、何種類置いてありますが? バスルームのシャンプーは?

わが家ではご覧のように歯磨き粉が洗面所に3本、バスルームにも違う種類のが1本。シャンプーは家族3人、それぞれ違う種類のものを使っています。

歯磨き粉もシャンプーも高級化が進んでいるだけでなく、個々の悩みや「洗い上がりをこうしたい」などの要望に応えるために“1人1本”の時代になってきているのだといいます。先日、新聞に数字も出ていましたが国内の歯磨き粉市場は1980年代〜2000年までは600億円台で推移していたのに、今世紀に入ってから「1人1本」需要と、単価アップが重なって、700億円を突破したのだとか。

これまでシャンプーや歯磨き粉といえば家族で共有が当たり前。年頃の女の子がいる家庭では、「お母さんと娘用」のちょっと高級で香りのいいものが別に置かれていたりしたくらいでした。それがスカルプヘアだったり、エイジング世代用の「ハリとコシを与える」ものだったり、カラーリングヘア用だったりと本当に多種多様になって、個人のニーズに合わせたものをそれぞれが選んで使うようになってきたのですね。

さらに言うなら、その時々に応じて、1人で何種類もの歯磨き粉やシャンプーを使い分けている人だっていることでしょう。

歯磨き粉やシャンプーはとてもわかりやすい例ですが、日用品の「個人ニーズへの対応」というのは、実はもっと多岐に及んでいるように思います。洗濯用の洗剤しかり、ボディシャンプーや石けんしかり。今後、家電にもこうした考え方は広まるように思います。

現に、毎日のごはんも、お母さんは健康のために玄米を食べたいけれど、お父さんや子どもたちは玄米を好まないので、自分用の玄米をまとめて炊いておいて冷凍しておき、家族用には普通に白米を炊いて、自分はレンジで温めた玄米を食べている・・・というような話も聞きます。
となえうと、1台の炊飯器で多種多様に炊ける機能がついていることよりも、小さな炊飯器でそれぞれを炊くという家も出てくるかもしれません。

「個人のニーズへの対応=カスタマイズ化できること」というキーワードの中に、これからの製品づくりのヒントがあるように思います。



2012年09月24日

英国で見つけた「附録付き雑誌」はやっぱりオシャレ!

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こんにちは。顧客視点アドバイザーの神原サリーです。

8月末〜9月上旬にかけて8日間にわたってドイツ、スウェーデン、ハンガリーへ海外取材に行ってきました。行きも帰りも英国ヒースロー空港でのトランジットが結構長く、特に帰りの便では4時間程度あったので、空港内を散策(?)する時間がずいぶんありました。そんな時間、書店で雑誌や書籍を見るのは楽しいものです。雑誌の判の大きさの違いにへーと思ったり、特集ページやファッション誌でトレンドを探ったり。

仕事柄、海外のキッチン家電のことを知りたいと思い、インテリア雑誌を2冊購入したのですが、そのうちの1冊は、ご覧の通り、手帳の附録付き! インテリア雑誌以外にも、いくつか附録がついているものを見かけたので、日本の宝島社の「エコバッグ付きファッション誌」みたいな流れは、世界的な潮流なのかなと。

で、私自身、購入のきっかけになった「HOUSE&GARDEN」誌の附録の手帳ですが、これってファブリックメーカーの老舗「GP&JBAKER」のものなのですよね。本誌をひっくり返してみると、今回の手帳の柄と同じ壁紙が張られた部屋の様子が一面に描かれていて、同社のタイアップ企画なのだなあとわかりました。

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帰国後、あらためてこのGP&JBAKER社について調べてみると、ジョージ・パーシブルとジェームズ・ベーカー兄弟によって1884年に創業したファブリックメーカーで、伝統的かつ独自のテキスタイルを次々に生み出しているのですね。王室御用達のファブリックメーカーとして王室の住まいに多数使われているそうです。

私が空港の書店でついつい、手にとってしまったのも、やはりデザインの美しさと、ハガキサイズの手ごろな大きさの手帳ということから。表紙部分もとてもしっかりとしていて、高級感がある作りになっています。

日本ではエコバッグ一辺倒からポーチその他、附録のバリエーションも増えてきていて少しずつ流れも変わってきているように感じます。また機会があったら、海外の書店をのぞいて、どんな附録がついているのかチェックしてみたいなと思います。そこにはきっとお国柄も表れているでしょうし、今後の何かのヒントが潜んでいることでしょう。

とても素敵なサイトです。 GP & J Baker